読み書き

イベントに気づきやすいハロウィンだけは、割と早めに気づく。
なので、今回も。
関係は少しだけだけれど、それでも、ハロウィンはハロウィン……




 テファお姉ちゃんのお店──家族の食卓。

 お姉ちゃんの、そして、皆の努力おかげでいつも忙しい。仮装の日のような、イベントをやる時は特に。





 今日は朝から人で一杯。だから皆、仮装をしたまま走り回っている。忙し過ぎて、飾りが落ちているよとお客さんに笑われる始末。そういう時には、こちらも笑って誤魔化すしかない。

 仮装は、皆が思い思いに。

 猫だったり、犬だったり、よく分からないものだったり、そして、真っ白な羽があったり。羽の子は不慣れで、一番疲れた様子。

「──サラサ、大丈夫?」

 問いかけにサラサは、上目遣いの縋るような表情。

「休んで、良い?」

 でも、それはできない。

「もう少しで終わりだから、頑張って」

「……ルシードの意地悪」

「 やってみたいと自分で言ったからには、最後まで頑張らないと。それに、今日だけだしね」

「うー……」

「唸ってもダメ。これも、勉強だよ」







 お店の営業時間が終わる。そして、最後の掃除が終わったら、ようやく休憩。

 残り物のパンでサンドイッチを作ったり、皆それぞれにお腹を満たす。お菓子が残っていればそれでも良いけれど、今日のような日はやっぱり残らない。

 それを期待していたんだろうサラサは不満顔。でも、空腹に負けてサンドイッチを食べている。心なしか、いつもより食べるのが早い。ついでに、皆が片付け始めたところでもお代わりをしている。

「さてと、食べたしそろそろ準備をしようか。サラサはそのままで良いから」

 サラサだけは顔に疑問符を貼り付け──それでもサンドウィッチを齧りながら──他の子たちはいそいそと自分たちのノートを取り出す。

「アンジェとケビンは算数が苦手だから算数を、他の子は好きなもので良いよ。分からないことがあったらどんどん聞いてくれて良いから」

 恨めしげな二つの視線は、敢えて無視する。代わりに、不思議そうなもう一つの視線に応える。

「サラサ達は子供同士で勉強とかしなかった?」

 口いっぱいにサンドウィッチを頬張っていたサラサ、それを笑うとつねられた。

「……そういうのは大人の役目」

「そっか。人に教えるのも勉強になるんだけれどね。ウリエルさんの受け売りだけれど、本当にそうだよ」

「そう、なんだ。でも、私たちが勉強するのは食べ物の取り方とかだから、難しい。さっき言っていた、サンスウっていうのはどういうものなの?」

「うーん、何って言われると難しいけれど……。例えばもの数え方とか、あとは、お釣りがいくらになるとか……。ああ、サラサ達はお金って使わないんだっけ?」

「私達は使わないけれど、物の交換に使ったりとか、意味は分かるよ」

「なら、大丈夫かな? そういう時に多く払い過ぎたり、戻ってくるお金を誤魔化されたりしないように大切なことだよ」

 サラサは眉をひそめる。

「……人間って大変なんだね。騙されないようにも、勉強しないといけないって」

「もちろんそんなことの為だけじゃないよ。それも、大切だけれどね。例えば、このお店は良い場所だよね」

 サラサが店内を見渡す。

 今は自分たちだけでガランとしているけれど、昼間は人で一杯で、活気があった。今日一日働いて伝わったのか、サラサはうなずく。

「大変だったけれど、皆、楽しそうだった。皆も、ここに来た人たちも」

「──良かった。でも、このお店を始めるにも、テファお姉ちゃんは頑張ったんだよ。お店を始める申請するにも文字が書けないといけないし、皆が食べていけるように買うものと売る物のバランスが取れるように計算しないといけない。テファお姉ちゃんが勉強していたからできたんだよ。皆それを知っているし、お店を始めたい子もいる。だから皆、真面目に勉強するんだ」

 サラサは、皆を見渡す。書き取りをやっている子や、算数の問題を両手の指を駆使して計算している子を。

「もしかしたら、やりたいことに必要はないかもしれない。でも、本当にやりたいことが見つかった時、勉強しなかったせいでできなかったり、いらない苦労をするのは誰だって嫌だよ。だから皆、自分の為に勉強するんだよ。ああ、テファお姉ちゃんに恩返しをしたいっていうのは、皆思っていることだね」

「……そっか。だったら、私にも役に立つ時があるかもしれないのかな?」

「もちろん」

「じゃあ、私もやってみたい……かも」

 少しだけ不安そうな表情。

「だったら、一から教えるよ」

 サラサは一瞬だけキョトンとした顔、そして。

「──うん、ありがとう」

 サラサの、本当に嬉しそうな表情。

 どうしてか、自分の方が照れ臭く感じた。


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