王女様はお年頃


 ガリアが誇る、花に彩られた大庭園。

 最精鋭である花壇騎士団は、それから名付けられた、まさにこの国の象徴と言えるもの。芸術に疎い自分ですら、見応えがあるというのは認めざるを得ない。完璧に計算し尽くされた配置には、たかが花だとは間違っても言えない。

 テラスから見下ろす先には、全ての赤がある。宝石の如く輝く赤、太陽の如く暖かな赤、血潮の如く力強い赤。ガリアの王女である私は、この庭園の主人。ただ維持する為だけにも湯水の如く使われる金貨を思えば、この上ない贅沢。が、今日ばかりは主人の座を譲ろう。




 赤の庭園に、ビダーシャルとファーティマ。美しい景色の中に、妖精という言葉では霞むほどに美しい2人。人とエルフの対立は、もしやその美しさに嫉妬してなどということはないだろうかなどと、つまらないことを思うほど。

 ただ手をつないでいるだけなのに、ファーティマは本当に嬉しそうに笑っている。いつもは仏頂面のビダーシャルも、それにつられてか、表情が緩んでいるのが分かる。もし私に絵心があれば、これ以上のシーンは無いと悦び勇んで筆を取ることだろう。

 近く夫婦になる2人は、恋人として一番幸せな時。

「──いいね、いいねぇ。随分と楽しそうじゃあないか。こんだけお似合いの二人だ、喜んで祝福するよ。恋人同士ってのは、良いものだ」

 そんな関係には縁の無い私でも、これが幸せだということは分かる。それを邪魔するやつは馬に蹴られて死んじまえというのも、なるほど、確かにその通り。

 しかし、ふと思うのは我が身のこと。

「……恋人、か。私は、どうなるのかね? 未だに何も聞いていないんだけれど」

 幾ら何でも、忘れられているなんてことはないはず。ああ、しかし、全くないとは言い切れないあたりが……

 ただなぁ、国内ではあんまりオツムのできが良いのはいない上に、散々に嫌われている。見繕えそうな相手ってのがゲルマニアぐらいにしかいない。どうも、ゲルマニア以外は子を残すって大切なことを考えていないんだよねぇ。

 そもそも、王位継承権最有力が女ばかりってのはどうなっているんだか。女だからダメだってことは思わないが、長く続いた伝統ってのは強固なものだし、それはそれで使い道だってある。前例ってのはすぐどうこうできるものでもなし。王族どころか、貴族としてどうなんだか。私に言わせれば、保険に隠し子ぐらい適当に作っておけってってんだ。男は、女なら誰でも良いだろうに。

 うちは……。最近やっていることといえば、やたらと張り切って本を書いたり、産業振興をあり得ない勢いで推し進めたり。いや、それはそれで王族として大切な仕事で、他の国よりよほどまとも。無能王なんて呼ばれるよりは良いんだが……

「あー、どっかに良い男はいないもんか……。悪くないってだけで良いんだ、悪くさえなければ……。」

 ふと見下ろす先には、相も変わらず幸せそうな2人。何が楽しいのかは、当人達にしか分からないんだろう。

「……ちょいとばかり、苛めてやろうか。色ボケられても、困る。独り身で寂しい、加えて、ひねた性格のお姫様にこれでもかと見せつけてくれたんだ。そりゃあ、しょうがない。うん、しょうがないよねぇ」
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